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宮川・勢多川・五十鈴川の河口部に位
置する二見町今一色(いまいしき)。明治まで、日常的に海の幸を伊勢神宮に献上してきた「海民」の郷だ。遠浅でなだらかな海岸線や砂泥の干潟を生かした、海苔やアオサの養殖、アサリ、バカ貝などの採貝漁が盛んな二見町漁業協同組合(組合員約200名)に、組合長の濱千代利弘さんを訪ねた。 |

海苔の養殖事情

海苔の養殖は、国から一時占用許可を得た区画で行われる。毎年9月に「海苔ヒビ」といわれる支柱を立て、10月に20℃以下になった「アミカケ」。これは種付けした海苔網や、胞子入りの牡蠣ガラを取り付けた網をノリヒビに結んで広げる作業だ。そして翌3月に海苔摘みと加工、終われば「ノリヒビ」を撤去する。

海苔は赤潮や海水成分・温度の影響をもろに受ける。台風もあれば病気もある。
その上、摘み取りを繰り返すと海苔の質が低下するのだそうだ。そこで一度張った網
の一部を回収して冷凍保管し状況をみて張り直す「冷凍網」や、張った網に海水を噴
射して成長をうながし汚れを落とす「網洗い」など様々な技術が開発されている。
二見で美味しい海苔が採れる秘密

色、光沢、風味、やわらかさが命の海苔市場では、網から最初に摘む「初摘み」が最高級。種苗の温度管理や、ここぞとみて摘む時期などが品質を分けるそうだ。海苔は川の水が入り込み、適度な塩分濃度があるところ、流れや潮が激しいところを好む。二見のように条件が当てはまる「支柱式養殖法」だと、干満の差が大きいほど網が干される時間が長くなるので、網に余計な藻が付かず海苔の純度が高くなる。又、遠浅の干潟は太陽に当たる時間が長いので、ノリに含まれるうまみ成分が増大するかわり、赤い色素が増え、見た目には「濃いめの茶色」になるのだとか。今まで「真っ黒」に惑わされていたことを反省する。
「酢の物・味噌汁にお勧め・アオサ」

全国生産量の7割近くを三重県がしめるアオサは、入り江近くで養殖される。水温が低いと伸びないし、強い流れや波があると千切れてしまうからだ。木杭に固定張りされたノリ網全体が、若草色に変わる1月から2月にかけ収穫される。安価で海苔とまた違った普段着の味、香りだ。
三重県は生産地トップ3・アサリ

全国的に見ても、収穫高がピーク時の約25%に落ち込んでいるアサリだが、「二見のアサリは、実が大きくて最高です」と漁業長は太鼓判をおす。アサリは3〜4月がシーズンで、遠浅の砂泥地、塩分適度な汽水域を好む。環境のよいアサリは殻がうすくて模様がはっきりしているが、しばらくすると色が薄くなってくるとのこと。

産業系排水と生活排水

伊勢湾に川から流れ込む汚れや負荷の大半は、産業系排水と生活排水で、特に合成洗剤等はチッソやリンなどの栄養塩類を多量
に含む。過度な栄養は海の生態系の環境バランスを壊し、赤潮などの原因となってしまうのだ。しかも伊勢湾は底がすり鉢状なので、化学物質や汚れが溜まりやすい。台風対策が優先して遅れたといわれる三重県の下水道普及率は、全国平均63.5%に対し
28.8%(平成14年度) 。現在、人口が密集する川の下流域を対象とする大規模な宮川流域下水道設備建設が進行中だ。
流木

2004年、宮川上流域に破壊的な被害を与えた台風21号は、「よういわれん・・
・」と漁業長が嘆息するダメージを二見漁協にもたらした。宮川上流からの流木が、
台風翌日には湾を横切って知多半島沿岸に延長10キロにわたって漂着したほどなの
だ。 海苔の漁場をびっしり覆う大量の流木に、網も船も壊れた。船も出せない有り
様の中、自腹の撤去作業が始まった。根こそぎ流れてきた木はからんで始末におえな
い上、船のスクリューに引っかかる。ようやくの思いで、宮川大橋下流の集積所に運
んで裁断し、県に処分を頼んだのだそうだ。アサリはといえば、川からどっと入って
きた真水で全滅。稚貝放流で回復のきざしは見えるものの、2005年4月現在、「アサ
リは生きておる、という程度」だ。
なぜこんなにたくさんの流木が?

林業の衰退は全国的な問題だが、宮川上中流域も例外ではない。林業が流域の経済循環の中に組み込まれていた時代が去って山は不在地主が多く、倒木や間伐材が放置され整備が行き届いていない。上流・宮川村での山腹崩壊は、スギ・ヒノキなど植林した林齢35年生の人工林で多く起きたという。手入れが大事な林齢に間伐しなかったため、モヤシのような状態になり山の土をしっかり押さえる力がなかったのだ。

漁業者としての実感

伊勢湾は特殊な風土の漁場だ。「海も山も一体」だという実感は強い。二見町漁協では、三重県魚連を中心とした漁民による川の上流域での「漁民の森」植林活動に参加している。自然林に戻していく努力が必要と、植えるのは雑木が主だ。「色々な木があっていい森になる」と漁業長。
海から森を見る

海の生物の食物連鎖の底辺にある植物性プランクトンは、潮や川が運ぶチッソ、リンなどの栄養塩類で成長する。しかしその栄養分も、ミネラル成分である「鉄分」の助けを借りなければ吸収することができない。海水は鉄分濃度が極めて低いが、それを補うのが、森林の腐葉土が生み出す「フルボ酸鉄」だ。鉄分たっぷりの河川水が流入しているかいないかで、その海の植物性プランクトンの発生率は30倍から100倍も違ってくるといわれる。日本で流通
する水産物の78%は外国産といわれる中、自然のメカニズムを生かし循環する自然社会をめざす漁業者の目が森へ、川へと向けられ始めている。
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