農場の絵 西別川のメッセージ
僕は、いつも「川のおじさん」と一緒に全国の川を旅しています。 今回はこの特集の 取材で西別川を訪ね、実際に川をたどり、流域の方達からお話を 伺いました。 仕事ではもちろん、生活や遊びの中で、人一倍「川=水」に関わってきたつもりの僕 でした が、腰をおろし、西別川の自然をじっとみつめる中で、本当の心のゆとりとは何か、 そして、自然と人の共生・共存を考えさせられた取材でした。  
(river-ing.comスタッフ・HIDE)

 
 

テディさん最高のナビゲーター

取材する僕たちを案内してくれたのは、標茶町在住のプロ・ネイチャ-ガイド、テディ・斎藤さんです。 初めて出会ったのは、2000年の冬で、川のおじさんと釧路川に出かけた 時のことで した。厳冬の川をドリフトボートで下りながら、全くの初心者のおじさんをガイド し、見事にトラウトをゲットさせてくれました。プロはすごい、と驚きましたが、何 より、テディさんが語る、斬新で可能性に満ちた、自然保護とビジネスの関係に対す る考え方に惹きつけられたことを覚えています。当時のテディさんは、北海道の財産 ともいえる自然の魅力の可能性、観光ビジネスのチャンスを確信して、7年間暮らし ていたニュージーランドから帰国、北海道標茶に拠点を構えたばかりでした。

1956年、東京で生まれたテディさんの異色の経歴は、僕にとって興味をそそるもの がありました。東海大学在学中にスウェーデンのルンド大学に留学。その後米国コロ ラド州立大学で 経済学とマーケティングを学び、タイム社、東芝勤務を経て、経営 コンサルタントとして独立し、地域開発やアウトドア関連のプロデュースを手がけま した。その後ニュージーランドに渡ることになった動機のひとつには、日本のアウトドア環境の未熟さを痛感したことがあったようです。

テディさんの考え方やプロフィールは 2001年11月の「おたより」もご参照下さい→
 

西別風景

取材の足跡

摩周湖の伏流水を源流とする「西別川」を特集しようと考えた僕に、 テディさんが、どうしても皆さんに伝えて欲しいと、提案してくれたのが、この特集 のコンテンツの ひとつ「西別川の水」です。(僕は最初、西別川の水が流域でどう 活用され、産業に役立っているかを紹介するのかな、と考えていました。たとえば、 飲料水や日本酒として販売されているとか、温泉もありますといったガイド的なもの です。)

空港で出迎えてくれたテディさんが、まず案内してくれたのは、西別川上流域でし た。キタキツネや鹿が遊びに来るという牧場、子ども達と校長先生が楽しそうににお 話していた虹別小学校。そのキャリアにテディさんも一目置くフィッシャーマンのお 宅。二次林の美しい虹別キャンプ場。アイディア力、実践力で自然保護活動を流域に 広げている方にもお目にかかりました。

地平線まで続く緑の草地に、点々とタンポポの黄色が風にそよぐ景色に心奪われてい る僕に、「北海道の人は、お客さんの姿が見えなくなるまで いつまでも手を振って 見送るんですよ」と、運転しているテディさんが説明してくれました。 翌日は、西別川源流から、河口までを走り、海から西別川を考えている別海漁業協同組合の方 からお話を伺うこともできまし た。

西別川は、思った以上に蛇行している川でした。源流の水の冷たさや、バイカモのニ ンフのような美しさに惹きつけられました。何かわかりませんが、日差しの中で、ま わり中にほわほわと舞っている綿毛がとても幻想的でした。そして、下るにつれ西別川が、人々に多くを与えている川であること、そして与えるゆえに傷ついてゆく姿を 目の当たりにすることになりました。

テディさんがコーディネイトしてくれた時間の 中で、ようやく彼の伝えたかったことが僕の中に流れ始めました。 豊かに持つ者ほど、その豊かさに無頓着になりがちです。でも、自然は無尽蔵ではな い。この豊かさを使い果たしては、自分達も生きることができないと気付いた流域全 体が、「人が自然と共に生きる道」を探し、動き始めていました。西別川は、産業だ けでなく、みんなの心を潤すかけがえのない川でもあるのですから。


 
 

北海道はパスポートのいらない外国・・・

国民の行ってみたい内外国含めた、旅行先の第一位 は北海道(JTB 1999年資料)。平成11年に北海道を訪れた観光客数は約635万人です。そんな北海道を、「パスポート のいらない外国」とテディさんは言います。1つには、ニュージーランドやカナダに 匹敵するくらいすばらしい、自然豊かな大地にパスポートなしで行けるという意味。 その一方で、パスポートにも匹敵する厳然としたルールで守るべき、貴重な大自然の 中に人々がどんどん入り込んでいる無法地帯、という意味だと思います。 例えば、西別川はじめ、北海道には、全国のフィッシャーマン憧れの河川が多いので すが、産卵期の魚1匹を持って帰ることがどれだけ資源にダメージを与えているかと いうことすら判っていない。ゲリラ放流もある。湿原保護の問題はじめ、カヌーが無 秩序に川に入るようになったことも問題になっています。では、よく言われる「自然 保護」のためには、人間をシャットアウトすることが一番なのでしょうか。 テディさんは、「人と自然の関係が切れたところには、真の環境保護意識は育たな い」と断言します。また、都市化や産業化の進んだ今日ほど、自然のもつ教育的価 値が求められている時代はない。とも。

 

 

 

 
 

テディさんからの提言 〜 環境保護の先進国に学んで

1980年に「自然保護法」制定したニュージーランドでは、人と自然がどうつきあって ゆくべきかのルールづくりが極めて明確で、「いかに自然に負荷をかけずに、いかに自然を利用するか」についての明確なレギュレーション(規則)が定められている。 自然がみんなの大切な資源であるという考え方にたち、このルールの徹底は、より持続的に自然を楽しむために当然のことといえる。

・自然環境
人為的に何かをなされたものに対しては、人間が自然保護の為に然るべき規制をして いかなければいけない。人為的に森を切って、木を切って針葉樹林を植えてしまったのであれば、それを人為的に戻していかなければいけない。

・フィッシング
全道共通のライセンスの発行。 水質、水量を含めた水環境の整備

・カヌー

舟を出せる総量を決め、認定がなければ舟を下ろせないシステム作り

・人が自然と仲良くなるために

モラルやマナーを育てていくための、若い人への環境教育

・ネイチャーガイドの育成

最も大切なのは自然と人の「Harmony=調和」。これを学ぶためには、自然と人をつ なぐ、インタープリター(自然の翻訳者)としてのネイチャーガイドの存在が不可 欠。ガイドは人が自然に親しむためのルールに精通するとともに、「自然」という資 源 の 監視人であり、環境教育の担い手といえる。

― プロのガイドは、ただ、お客を『レジャー』として楽しませるだけではない。 五感で自然を感じる『体験』ひいては『環境教育』につながる何かを与えなければならない。それは『教育』でありながら、『エンターテイメント』としてのおもしろさを持っていなければならない。北海道であれば、ガイドビジネスは成り立つ ―

 

 

 

 

取材を終えて

確固たるビジョンを持つテディさんが北海道に来て、わずか4年。自然と人が共生する道への、具体的な方法を知る彼に刺激を受け、今、加速度をあげ、西別川は本当に 人が自然と共に生きるための次のステップを踏み出したような気がします。めざしているのは、西別川と人々が、互いのちからを与え合う世界です。流域の個々の力をまとめ、破壊した自然を修復しながら、西別川や自然に負担をかけずに、いかに利用してゆくかではないでしょうか。

今回の取材旅行で、テディさんは、感じたり答えを出すのは僕自身だという前提で、 ゆるやかなライン取りをしてくれました。そのおかげで、腰をおろし、西別川の自然 をみつめる僕の耳に、自然の代弁者であるバイカモのつぶやきが聞こえてきました。 「川も生きもの、人も生きもの。西別川とそこに住む人達は、”一心同体”。共により良い暮らしをしようではないか・・・」と
 
 

関連サイト
アースサークル社 
塘路ネイチャーセンター 
道東インフォメーション 
鱒達に出会う休日 in 北海道 
鱒達に出会う休日 in ニュージランド
北海道プロフェッショナルフィッシングガイド協会 

写真提供:Northern village Earth Circle Ltd. 別海漁業共同組合
イラスト:せら工房

 

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