マチグァーの喧噪の下 ガーブ川
 
市場の食材
那覇市の中央部にある市場(マチグァ―)の混沌と熱気は、期待以上だった。沖縄一のメインストリート国際通 りを一歩入ると、露店、雑居ビルなどがアメーバのようにてんでに連なり、いくつもの市場を形成している。色とりどりのありとあらゆるものが並ぶ迷路をさまよい、クラクラする。店の人のホスピタリティと好奇心は日本一ではあるまいか。うらやましいばかりの活気と明るさだ。
このマチグァ―の喧噪の下に暗渠となった川が流れているとは、言われなければ誰も気付かないだろう。

その昔、このガーブ川は大雨が降る度に氾濫することを除けば、薪を積んだ山原船が行き交っていた久茂地川に注ぐ、ごく当り前の里の川だった。 1962年から1965年の改修工事でガーブ川は切り立ったコンクリ三面 張りとなり、半分は地下に姿を消し、人々の意識から隔てられた。

1980年はじめ、沖縄テレビのゴムボートがガーブ川の市場下暗渠内部に入り、カメラを回した。スタッフを待ちかまえていたのは、大繁殖したゴキブリと、酸素マスクが必要なほどの悪臭だった。 ガーブ川は長田2丁目丘陵部の住宅地から湧き出た水に、生活雑排水を集めながら 密集地を流れている。だから、下水道を整備してすべての排水を除いてしまったら、 川が枯れかねないというジレンマがある。

こうなったら、水を流すひとりひとりが意識をもって、できるだけきれいな水を流し、きれいな水源になるしかないわけだ。沖縄には、水を敬った先人の心がお手本にある。加えて、近自然河川工法を取り入れ、緑を復活させ、川に近寄れるようにできれば、川をかつてのように生活の中に取り戻すことも夢ではない。

下流でガーブ川と合流する久茂地川では、悪臭が鼻をつき、合成洗剤の泡が浮いていた1986年から、清流と緑を取り戻す市民運動「久茂地川フェスティバル(例年10月頃)」が続けられている。「この久茂地川の姿こそが本当の那覇の姿」と、現実から目を背けず、舟を浮かべ、川を清掃し、流域住民の意識に川を取り戻すことが第一歩だった。今も白濁した茶色の川だが、かつてのどす黒い川は、市民の意識の高まりとともに確かにきれいになった。

沖縄の川は、人々の生活振りがそのまま反映する「環境のバロメーター」だ。川の規模が小さく短いので、汚染がすぐ結果 として現われるからであるが、それは逆に、改善の効果が現われるのも早いということでもある。

「沖縄は、川をはじめとして、環境や自然に関することが、全てティピカルにそしてミニチュアとして現れ、研究や学習に最適な環境・自然だと思っています。他府県や南の国々にとっても、この沖縄にこそ、問題解決のモデルケースがあると私は変な自慢をしています。」(NPO法人おきなわ環境クラブの下地邦輝さんがくれたメール)


ひとりひとりの努力を力強く反映するのが沖縄だ。沖縄の川からは、もう目が離せない。

 

街の側溝・ガーブ川に迫る
ガーブ川の写真1
ガーブ川の写真2
ガーブ川の写真3
ガーブ川の写真4

特定非営利活動法人おきなわ環境クラブホームページ
河川文化ディスカバー・フォーラム in 沖縄 パネルディスカッション「河川文化・河川と地域のつながり」

【マチグァ―とガーブ川の昔】
戦世(イクサユー)が色濃く残る1950年頃、密貿易やヤミ市に頭を痛めた那覇市は、ガーブ川を挟み(この周辺も、小さな闇市を形成していたという記録も残る)、東側を主に衣料雑貨、西側を食料品と分け、公設市場を設置した。この使用料が市の財源として大いに役立ったといわれる。近くの壺屋(沖縄を代表するやきもの「壺屋焼」で有名な町)でいち早く陶器の生産が再開されたことなどもあって、ここを中心に那覇市の復興が始まった。 「農連市場あたりからガーブ川沿いには、裸電球がぶらさがっている屋台がずらっと並んでいた。そこでは一合コップ一杯の泡盛が五セントだったからずいぶんと遠い昔の話である。貧乏新聞社ゆえにいつも前借りで二、三人の仲間と出掛け朝方まで飲んだ。」と沖縄のジャーナリストが書きとめている。「沖縄下水道年表」によると、1960年から、那覇市久茂地川、ガーブ川、安里川及び上水源の比謝川等の排水タレ流しによる水質汚濁が社会問題化したとある。

【マチグァ―とガーブ川のこれから】
2000年4月、那覇市は、ガーブ川水上店舗を撤去し、民間開発と一体となって周辺に 新たなバザール広場や小公園、マチグヮーセンターなどを整備する再生計画「都市活 力再生拠点整備事業」(リジューム事業)を策定、発表した。ガーブ川の水路は暗渠 にして残し、上部は幅20mの道路(ガーブ川線)をつくる計画で、現時点では整備実 施時期は未定。
(
問合せ:那覇市都市計画部 都市再開発課)
那覇市公式サイト

参考文献:「昭和の沖縄」琉球日報社会部編 ニライ社      
     「川は訴える」寺田 麗子著 (有)ボーダーインク        
参考:「環境−人・インタビュー19回 ―寺田麗子さん―」 さうすウェーブのサイト内


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