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「らしさ」というものは大事である。「らしさ」は「柄(がら)」とか「風(ふう)」或いは「振り(ぶり)」でもある。それらしく生きていれば、その人のお人柄というものができていく。最近は、お家柄というのは流行らなくなっているが、土地柄とかおクニ柄というものは今も健在である。九州人らしさというものどういうものか? いろんな見方があろうが、私は、九州の人というのは大変「地元志向」が強いのではないかと思っている。「地元志向」というものはどこでもあるが、東京がいちばん希薄で九州がいちばん強いのではないか。私の知る限り、村田幸博さん【1】や今泉重敏さん【2】は全国的に見てもまれな地域づくりのリーダーで、できれば全国的に活躍して欲しいと思っているのだが、人から頼まれたときは別として、自ら全国に打って出るということはない。しかし、彼らの活動は全国でいちばんパワフルである。すばらしいのだ。惜しい。まことに惜しい限りである。
村田さんは、昨年、全国水環境交流会の全国大会【3】を引き受けられて大成功に導かれたが、日頃の活動はおおむね熊本が中心で、九州の外に出ることはない。「熊本市南部地区市民の会」【4】を皮切りに「熊本の水を良くするボランティア協議会」【5】などかずかずの地域活動をやってこられたが、なかでも「緑川の清流を取り戻す流域連絡会」【6】ではその事務局長として大活躍をされた。「緑川の日」【7】を定めて今まで延べ20万人を超える人たちを動員して、緑川の清掃活動をやってこられた。現在は、地元・川尻【8】を中心にして、子供達に「伝統漁法の達人づくり」など子どもの自然教育に力を入れておられる。
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| 加藤清正の代表的治水工事が今に残る緑川(写
真提供:国土交通省河川局) |
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「緑川の日」は毎年4月29日に開催される(写真提供:国土交通省河川局) |
今泉さんも福岡を中心に大活躍をしておられるが、これも村田さんと同様で、自ら全国に打って出るということはない。今泉さんは「まちづくり計画研究所」【9】を平成5年につくられ、「まちづくり」に関するまことにユニークな取り組みをしてこられている。また、九州における「まちづくり」の“のぼせもん”というネットワーク【10、11】の代表世話人で、国や自治体の役人とのパイプも太く、「まちづくり」や「川づくり」のボランティア団体等、約1万人の幅広い人的ネットワークを持っている。最近私が注目している彼の活動として、「町まるごと学校化構想」というのがある。これは、小学校単位
でそういうまちづくり協議会をつくって、子どもと一緒になって元気な「まち」をつくっていこうとするものである。
子どもに焦点を当てた「まちづくり」というものは、今後まことに大事な地域活動になっていくのではないかと思われる。今、教育基本法の改正【12】が話題になっているが、法律を改正したからといって子どもがよくなるというのではない。大野重男さん【13】は、学校教育に限界を感じておられ、「ハーモニーセンター」【14】という子どもに焦点を当てた乗馬倶楽部をやっておられるわけだ。やっぱり地域の人が、NPOに限らないが、地域の人が、社会の中で子どもに焦点を当てて地域活動をやっていくということが今後極めて重要な課題になっていくと思う。「地域力」【15】だ。全国各地でその萌芽がでてきている。
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| 小貝川河川敷でのポニー乗馬風景(写真提供:大野重男氏) |
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ポニーは子ども達に沢山のことを教えてくれる(写
真提供:大野重男氏) |
大野重男さんの「ハーモニーセンター」は別として、もっとも先をいっているのが村田さんと今泉さんの取り組みだ。子どもを川に連れて行って、できるだけ本物に近い自然を体験させる、そういう体験学習が子どもの情操教育にきわめて有効である。学校でとても教わらないものを自然の中で身につけさせる。それに人生をかける地域の「のぼせもん」がいる。すばらしいことではないか。それぞれの地域の小学校を単位で川に子どもを巻き込んだ動き、そういう心のふれあいが必要になってきている。やはり、これからは、大人のほうが地域ぐるみで子どもを意識しないといけないのではないか。
その地域にふさわしい川というものは、その地域の風土にふさわしい川のことである。風土というものはその地域の人びとの「歴史と伝統・文化」が染み込んだものであり、川の「らしさ」とは、その地域の人びとの生活振りが染み込んだものである。だから、川の「らしさ」というものは地域の人が参画しないとできてこない。否、参画というよりも地域の人が主体でないといけないのだ【16】。
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| 筑後川のカッパ祭り(写
真提供:国土交通省筑後川河川事務所 撮影:湯江網満氏) |
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緑川の乙女河原で水生生物調査(写真提供:国土交通省熊本河川国道事務所) |
私は、これからの日本、それぞれの地域が「地域力」というものをつけていかないと、特に、過疎地域等は崩壊していかざるを得ない。そうなれば日本の「らしさ」というもの自体が崩壊せざるを得ない。今いちばん大事なことは、それぞれの地域が「地域力」をつけることである。この市場原理が渦巻く中にあっては、贈与経済の部分を増やしていかないとそれぞれの「経済力」がダメになるし、地域産業の後継者が育たない。地域は後継者を育てながら、地域の文化というものを守っていかなければならない。否、「文化観光」に力を入れて地域に金を落としてもらわなければならない。地域のビジター産業を育てなければならないということである。過疎地域にすばらしい自然があるからというだけでは、地域経済が活性化するほど人が来る訳ではない。外国人にも大勢来てもらわねばならないのだから、よほどの工夫が必要だ【17】。
私が「劇場国家にっぽん」を提唱しているのは、地域を劇場になぞらえ、地域の人びとが主役となってお祭りなど地域の生活をイキイキと生きている、そんなイメージからである【18】。「劇場国家にっぽん」はお祭りを重視している。今、耕作放棄地の樹林帯や花畑への転換や豊かな自然環境の保全、回復のためのビオトープ・ネットワーク等の整備、都市住民に農作業の場を提供する市民農園の活用、さらに農作業を通じてレクレーションや体験学習を行う施設整備と支援システムの充実が求められている。
グリーン・ツーリズム運動【19】や美しい村づくり運動【20】は、今後きっと急速な高まりを見せてくるに違いない。しかし、私は、究極の「文化観光」は「ジオパーク」【21】だと考えており、九州の川のどこかでそのモデル的な取り組みを始めたいと考えている。筑後川、緑川、大野川、五ヶ瀬川など九州の川は、それぞれ「歴史と伝統・文化」に裏打ちされたすばらしい川である。1000年、2000年というものでなく、3万年前或いは2万年前から連綿と続く川の歴史、流域の歴史を紐解いてみたいものだ。今年は、宮崎県五ヶ瀬町【22】で「全国源流シンポジウム」【23】が開催される。そのときは「ジオパーク」の話をして、「ジオパーク」に対する九州の人たちの関心を是非得たいものである。
九州地方の川づくり(国土交通省九州地方整備局)
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日向灘に注ぐ五ヶ瀬川(写真提供:国土交通省河川局)
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大分平野をつらぬ
き別府湾に注ぐ大野川(写真提供:国土交通省河川局) |
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| 筑紫平野を流れる筑後川/久留米市付近(写真提供:国土交通省河川局) |
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筑後川のデ・レーケ導流堤(提供:筑後川河川事務所 撮影:柳田ヒサコ氏)
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(河川プレビューNo.137 春季号 河川新風土記6.「九州」より転載)
季刊「河川レビュー」
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