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平成5年に発足した全国水環境交流会【1】に呼応して水環境交流会in北海道が活動を開始したが、現在では、水環境北海道というNPO法人(理事長・佐伯昇北大教授)に成長し、社会的に意義深い活動をけっこう活発にやっている【2】。そのなかで、特に、私が注目しているのは、平成13年から草の根レベルのモンゴルとの交流が始まっていることである【3】。
副理事長の妹尾優二さん【4】は、その著「多自然型川づくりを越えて」【5】のなかでディープエコロジー【6】に通
じるすばらしい考え方を述べておられるが、妹尾優二さんのみならず、専務理事の荒関岩雄さん【7】にしても或はその仲間である田口哲明さん【8】にしてもこれからの新しい文明を切り拓くすばらしい考え方の持ち主だ。私のかけがえのない仲間である。
私は、現在の西洋文明というか科学文明はぼちぼち行き詰まってきており、ディープエコロジーの考えを取り入れた
新しい文明を作り出していく必要があり、そのためにいろいろな試みがなされなくてはいけないと考えている。その一つが中沢新一【9】を中心とした「芸術人類学研究所」【10】の学術研究活動である。私は、中沢新一のそういった哲学に呼応して
地域での実践活動をやっていきたいと考えている。
その一つが「白滝ジオパーク」と呼んでいる湧別
川【11】の流域圏構想である【12】。湧別
川の流域会議もできた【13】。しかし、この活動をディープエコロジーの考えを取り入れた新しい文明にまで繋げていくには、実は、草の根レベルの・・・モンゴルとの文化交流が不可欠なのである【14】。
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| 大雪山系を源にオホーツク海へと注ぐ湧別
川(遠軽町/写真提供:国土交通省河川局) |
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2006年「GUPI
GEOFORUM」で白滝ジオパーク構想をプレゼン(写真提供:白滝黒曜石遺跡ジオパーク構想推進協議会)
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| 2007年3月、白滝黒曜石遺跡ジオパーク構想シンポジウムで川のおじさんが基調講演(写
真提供:北海道紋別郡遠軽町) |
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源流白滝地域での湧別
川渓谷風景(写真提供:国土交通省北海道開発局網走開発建設部) |
文化とは、私の考えだが、「自然系と人工系を含んだ人間の生活システムの全体」である。人工系は、自然系に応じ
て人間が作り出したものである。宗教は人工系である。宗教感覚とか人々の感性というものは、自然系と人工系とがいったい不可分になったものであるので文化と呼ぶのがふさわしい。私は、「歴史と伝統・文化」という言い方をするが、これは単に文化と言っても同じようなものである。
文明とは、複数の国が共通する文化を持っていなければならないが、少なくとも宗教感覚や人々の感性が共通
であれ ば、一つの文明を共有しうる。私は、現在の西洋文明というか科学文明は、全面
否定するのではなくて、大部分は認めて、一部を修正すれば良いのではないかと考えている。これから切り拓くべき新しい文明は、唯物主義でもなく唯心主義でもなく、物にも心があるという感覚や感性を大事にしたものでなければならない。経済で言えば、市場経済ではなくて贈与経済である【15】。
モンゴリアン【16】には、南回りのモンゴリアンと北回りのモンゴリアンがあるが、両者とも「歴史と伝統・文化」にかなりの共通
点があり、宗教感覚や人々の感性も同じようなところがある【17】。したがって、日本とモンゴルと南洋諸島のいくつかの国とが連携して、現在の西洋文明の欠点を補う新しい文明を作り出していくことが可能かもしれない。私は、そう考えていて、とりあえず黒潮文化【18】はさておき、北海道において、黒曜石文化【19】をテーマとした湧別
川の流域圏構想(白滝ジオパーク構想)をもとに、地域再生を図りたいと考えている訳だ【20】。そのためには、水環境北海道の皆さんの協力が不可欠である。
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| 面
積は日本の約四倍。モンゴル国の大草原で乗馬交流(写真提供:(財)人ハーモニィセンター大野重男氏) |
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白滝地域で出土した長さ26センチ余りの尖頭器(写
真提供:白滝黒曜石遺跡ジオパーク構想推進協議会) |
日本の石器文化の源流は、バイカル湖の周辺だと言われているが、新しい石器文化を持った人々は、アムール川沿いの地域を通
って北海道にやってきた。そして、湧別川技法【21】という技術を開発するのである。その湧別
技法集団は、日本列島を南下し、日本の縄文文化の基礎を作る【22】。その発祥の地は北海道である。北海道は、原生林がほとんどなくなったといえ、広々とした大地と荒々しい自然はまだ十分残っているし、ディープエコロジーを勉強するには日本列島でもっとも条件に恵まれている。
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| イトウ((写
真提供:国土交通省北海道開発局釧路開発建設部) |
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イトウはサケ科イトウ属の魚で、日本産の最大の淡水魚である。サケやサクラマスと異なり、産卵しても死ぬ
わけではなく、5年以上も生き延びて最高2mにまで成長するといわれる。昔は北海道全土に生息していたようであるが、今
は道東や道北の自然度の高い河川にのみ生息する。普通はワカサギやイトヨなどの小魚を補食するが、ときには野ネズミや水鳥の幼鳥を丸のみするほど獰猛である。イトウの人工養殖が可能になった最近では、野生種がいない本州でも管理釣り場に放流されて人気を博しているが、野生種は絶対に保護しなければならない。保護の一番いい方法はイトウのいる中流部の森はもちろん水源の森も、極力、原生林の状態に回復保護することである。そうすればそういう森はヒグマのテリトリーとなってイトウの乱獲を防ぐことができる。
日本オオカミ協会【23】というのがあって、森と動物と人の良い関係を求めて、すなわちディープエコロジーの立場から、「オオカミを放つ」運動をしているが、北海道ではヒグマがまだ棲息しているので、これを大事にしなければならない
。縄文人の感覚と感性からすれば、ヒグマは神である。神は恐れ敬わなければならないのである。
縄文人の感覚と感性を身につけるには、マタギ【24】の文化もさることながら、アイヌの神話や文化を勉強するのがもっと
も良いように思われる。それには北海道でなければならないのではないか。安田喜憲【25】は、その著書「世界史のなかの縄文文化(改訂第三版)」(平成16年11月、有山閣)【26】の中で、「縄文時代以来、1万年以上にわたって自然と共生しながら、豊かな平等主義に立脚した社会をたんたんと持続的に維持してきた東北が、21世紀の人口爆発と地球環境の危機の時代に、文明センターになるというのは、歴史の必然のような気がする。」と述べ、東北桃源郷構想なるものを打ち出
している。
私は、北海道と東北でともにそういう取り組みを始めるのが良いと思う。私としては、妹尾優二さん、荒関岩雄さん、田口哲明さんをはじめとする「水環境北海道」の皆さんに期待するところ誠に大である。
(河川プレビューNo.138 夏季号 河川新風土記7.より転載)
季刊「河川レビュー」
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